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私が「内発勁(ないはっけい)」という技術の有効性に気づき、その深淵なメカニズムの研鑽をスタートさせたのには、ある明確な原体験が存在する。


それは過去の稽古において、私の2倍ほどの体重を持つ非常に大柄な塾生と対峙した時のことである。


彼がこちらの力を吸収・無力化する「化勁(かけい)」を用いて強固に抵抗してきた際、私は「なんとなく効きそう」という感じがあったので、内発勁を用いて入り身をしてみた。


すると、どうだ。圧倒的な質量の差による力のぶつかり合いが一切生じることなく、巨大な壁のような彼の側面へ、「スッ」と入り身ができてしまったのである。


この絶対的な体格差と抵抗を無に帰した瞬間、「内発勁を原動力にした動きは、武術における有効な身体操作になり得る」という確信が生まれ、今日に至る探求が始まった。



技の次元を引き上げる「内発勁での移動」


一般的に「発勁」という言葉を聞くと、打撃や当て身などによって「相手に対して作用させる爆発的な力」というイメージが先行するだろう。しかし、その先があるのだ。さらに、強圧微動術、身体にとって、非常に有益なものへと変貌する。


まずは検証と研鑽のために武術を用いる。


相手の内部へ浸透させていたそのエネルギー(波)を、「自分自身の身体」に作用させて動く。


この境地に至るためのプロセスは…

  1. 相対稽古で「相手への発勁」と「相手から受けた発勁」の感覚を知る

  2. その感覚で「自分自身の肉体を動かす」


この「発勁で動く」という感覚を掴み、自身の移動に応用するだけで、武術における優位性は劇的に跳ね上がる。


自身に起こした波は、相手の心身が防御反応するコンマ何秒以前に、強制的に波を誘発させてしまうようだ。しかも、通常の筋肉の収縮による予備動作(力み)が存在しないため、更に防御し難くなる。


結果として、これまで筋力で抵抗されて弾かれていた技や、全く効かなかった技が、嘘のように面白いほど掛かるようになる。



トップアスリートと内発勁の共通項


さらに分析を深めると、この技術の有効性は決して武術という狭い枠組みに留まるものではないことが見えてくる。


例えば、サッカーにおける激しいボールの競り合いなど、強烈なフィジカルコンタクトが要求されるあらゆるスポーツにおいて、この「発勁で動く」身体運用は絶対的な威力を発揮するだろう。


単なる筋力と質量の衝突ではなく、波として相手の構造の隙間に入り込み、重心を根こそぎ奪うことができるからだ。


現代スポーツの市場やトップ層の動きを多角的に分析すると、世界で活躍する超一流のアスリートたちの中には、無意識にこの「内発勁の感覚」で動いている選手が存在するのではないかと見ている。


彼らが見せる常識外れのボディバランスや、一見すると小柄なのに当たり負けしない異様なフィジカルの強さは、現代のスポーツ科学や筋力トレーニングの枠組みだけでは到底説明がつかない領域にある。



内発勁100%へのOS書き換え


我々の日常的な動作の大半は、居ついた状態に支配されている。


これを「従来の動き方」とするならば、強圧微動術の最終的な目的は、己の内部にあるこの「従来の動き方」と「発勁で動く(内発勁)」の配分を意図的にコントロールすることにある。


最初はほんの数パーセントの感覚から始まり、修練を重ねるごとに内部感覚の解像度を上げていく。そして最終的には、居つきを完全に排除し、内発勁の割合を極限まで「100%」に近づけていく。


身体のOS(オペレーティングシステム)を完全に書き換え、一挙手一投足のすべてが内発勁となるようにしたい。進行形の考え方、さらに精度を上げようとの思いで精度を上げていって欲しい。

 

前回の「同調作用の原理」に続き、実際のセミナーで行ったプロセスを順を追って公開する。


第3回となる今回は、壁を使った検証を通して自身の現在の身体特性を見極め、「発勁に合う体質」へと変換していくための重要なステップである。



壁を使った「反発力」の検証


まずは、極めてシンプルかつ物理的な検証を行ってみよう。壁に向かって立ち、片手を当てて自分の力で力強く壁を押す。すると当然、作用・反作用の法則(跳ね返りの力)によって、自分の身体は後方へと押し返されて動くはずだ。


ここで着目すべきは、「自分が後方へ動く度合い(距離)が大きいか、小さいか」である。

この検証を複数人で行うと、結果は明確に二極化する。


大きく動く人は、壁をドンと押した反発力だけで、後ろへ4、5メートルほども滑るように下がる。一方で、動きが小さい人は、どんなに強く壁を押しても1メートルも下がらない。


この物理的な反応の違いこそが、あなたの現在の「体質」を如実に表している。


これは、私がまだ発勁がよく分からなかった頃(佐川派大東流の初期、光輪道合気道時代)に一人でよく練習していた方法だ。



「響く体」と「化勁(かけい)体質」


壁に反発して大きく動ける人は、物理的な力が全身を淀みなく通り抜ける「響く身体」を持っている。自ら発した力、あるいは外部からの反発力を、骨格や筋膜のネットワークを通じてロスなく推進力に変換できる構造だ。


この体質の持ち主は、内発勁(発勁)を極めて体現しやすい。逆に言えば、相手の力を吸収し無力化する「化勁」の体質ではないということである。


対して、1メートルも動かない人は「響かない身体」である。衝撃や反発力が体内のどこか(関節、筋肉、各細胞)で分散・吸収されてしまう、いわゆる「化勁体質」に近い状態だ。


相手からの打撃を吸収する防御面では有利に働くかもしれないが、こと「内発勁で自らの身体を動かす」という目的に対しては、この状態が大きな障壁となる。


内発勁という波(エネルギー)を伝達し、形にするためには、何よりもまず「響く身体」が必要不可欠なのだ。


また、響く身体であれば、反応速度が速く突発的な対処時にも有利になる。しかし、化勁体質だと反応速度が遅くなってしまう。


技を受けた時の受け身を取る反応速度も遅れるので、怪我をし易くなる。以前は化勁の方が安全と言っていたが、現在では技をかける出力と速度が上がっているので、響く身体で受けを取り、反応速度が上がるようにすべき、との見解だ。



少ない力で身体を運用するための推測


ここで、一つの重要な推測が成り立つ。 壁を押して大きく動ける人間、つまり「響く身体」を持つ者ほど、実は極めて少ない筋力で高度な身体運用が可能になるのではないか、という仮説だ。


なぜなら、意念で誘発させる微細な振動を、途中で減衰させることなく、全身の強大な質量移動へと変換できるからだ。


まずは、自分が現在どちらのタイプであるかを明確に自覚すること。そして「響かない身体(化勁体質)」であったならば、それを意図的に「響く身体(発勁体質)」へとチューニングしていく必要がある。


以降の解説では、この体質変換の具体的なアプローチを含め、強圧微動術習得のさらなる深奥へと迫っていく。

 

実際のセミナーで行った順番通りに、順次動画を公開していく。今回は「同調作用の原理」、いわゆる「発勁」である。


伊豆八幡野におけるお墓参り、来宮神社、そして元肥田邸を巡る道中において、肥田春充翁と深いゆかりのある方々と偶然、出会うという奇跡的な場面が二度もあった。


そのため、その後のスケジュールは非常にタイトになったが、それ以上に得がたい貴重な証言を伺うことができた。参加者は皆、春充翁の存在と肥田式強健術の凄みに、かつてないほどのリアリティ(実在感)を肌で感じ取っていた。



今回のセミナーにおいて、わずか数時間で「強圧微動術を習得する」ための具体的なプロセスについて、実は当日の電車に乗るまで一切考えていなかった。品川から伊豆高原へ向かう「特急 踊り子号」の車内で、集中して構築しようと決めていたのだ。


常識的に考えれば、数時間での術の習得などあり得ない話だ。いかにして短時間である程度の形にし、その後の修練で確実に上達できるメソッドとして伝授するか。しかし私の中には、それが「可能である」という確信があった。


昨年と同様に電車に乗り込み、横浜を過ぎた辺りで、その最適解が突如として閃いた。


「このアプローチであれば、武術の動きの中で明確に検証でき、武術として上達しながら、そのまま強圧微動術の施術へと直結させることができる」という完璧な見通しが立ったのである。


会場に到着後、さっそく初期メンバーにその閃いた内容を伝え、二人で事前の検証を試みた。


結果は、予想を違わぬ明確なものであった。その確かな実証を経た上で、参加者全員へ公開(伝授)するというのが今回の流れである。


自分でも不思議な感覚ではあるが、これまでの果てしない練功と、多種多様な武術的検証を総動員した結果の産物と言えるだろう。しかもそれは、「ハイレベル過ぎて、正中心練磨の感覚をまだ掴んでいない者には不可能」といった再現性の低いものではない。


この画期的なメソッドは、順次公開する動画の中で明らかにしていく。今後の展開を、楽しみにして読み進めてもらいたい。

 
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